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オレンジの壺 宮本輝著

オレンジの壺〈上〉 オレンジの壺〈上〉
宮本 輝 (1996/11)
講談社

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BlogACiVi 宮本輝『オレンジの壺』
木蓮の夢 『オレンジの壺』
小吉生活 宮本輝「オレンジの壺」



 祖父の日記を遺産相続した主人公を通して、戦争という過去が現在を生きる人間にいかなる影響を与えているのかを読みとく推理小説のような作品。
 でも謎は謎のまま。読了後スッキリしない気分をいだくかも、ですよ^^;

 第一次、第二次世界大戦へ日本が没入していく時期だから、過日読んだ「士魂商才」の出光興産の創始者出光佐三が奮迅したのと同時代。

 主人公と、翻訳の手伝いがきっかけで主人公と急接近する滝井と言う人物の両方が短い結婚生活の後離婚したという設定はちょっと揃え過ぎていて陳腐に感じましたが、それ以外はさすが稀代のストリーテイラーの宮本さん、ぐいぐい物語りに引き込まれ上下巻2冊をあっという間に読みきってしまいました。
 (まったく関係がないけど、僕の文章に句点が多いのは宮本輝さんの影響かなと思った。)

「馬鹿な戦争だった。仏蘭西は勝ったが、死んだり行方がわからなくなった人間は、なんと百三十一万人だ。怪我をした者も、それと同じくらいの数になる。仏蘭西だけでも、それだけの被害を受けた。他の国も、負けた国も合わせれば、その数十倍になるだろう。俺の弟は三人とも、南部戦線で死んだよ。

 感慨の内容もさることながら、日本で終戦直後これだけの情報を国民が持っていたかどうかと考えると、やはり西欧の政治は成熟しているなあと変な感銘を受けた。

<恋の痛手を忘れるためには、新しい恋へと走るのが一番いい>という誰かの言葉を、しきりに胸の中でつぶやいてみる。

「日本は『勝った、勝った』と単純に喜んでいるが、ロシアは日露戦争での屈辱を決して忘れていない」
 と井岡君は言う。しかし、日本の政府も軍部も、大局観がなく、うかれすぎている。民族性というものに対する思慮に欠けている。そうした体質が一番心配だと、井岡君は真剣な表情で言う。私も同感だ。

「自分の国を恨むことと、自分の国の一部の人間を恨むことを一緒にしてはいけない。ぼくは、きみに、それだけは忠告しておく」

 ユダヤ人社会にも、強固な結束がある。しかし、アスリーヌ夫人の夫は、国籍を超越した全世界的な共同体を夢見て、それを実行に移そうとした。文化、経済、学問、政治・・・。それらのジャンルで、すぐれた才能と可能性を持つ人格者の組織を作るという計画は、彼の生涯の夢として一九〇五年に動き出した。

 私は<絵に描いた餅>という日本の言葉を出し、宗教的結束、もしくは民族的結束、あるいは強い思想的結束を基盤にしない組織の発展などあり得ないと主張した。
 すると、
「華僑は、一見、民族的な結束によって結ばれているように思える。だが、本質は違う。つまり、彼らは<華僑>という銀行を作ったにすぎない。ただその銀行は、中国人にしか金を貸さないだけだ」
 と答え、
「我々は、民族を超えた銀行を作ろうとしている」
 そう言って、話を打ち切った。

 私も、夏の早朝の雲を見やりながら、娼婦の時代のレナーテを買ったであろう無数の男たちについて考える。レテーナをあざむき、ローリーを妻にすることを心から欲している私が、レナーテの過去に嫉妬している。過去に嫉妬する・・・。なんと愚かなことであろう。

 ・・・やさしさ、そうだ、やさしさだと思う。この単純でありきたりの、使い古された言葉。やさしさ・・・。そうだ、いまのところ、私には、これ以外の理由は考えつかない。私は、アスリーヌ夫人たちのそれぞれの人間性から、絶え間なく、<やさしさ>を感じつづけてきたのだ。
 <やさしさ>というものが、かつて人間の哲学に組み入れられたことがあっただろうか。<やさしさ>がイデオロギーになったことがあっただろうか。
 私は、人間を侮辱するありとあらゆる権力や地位や暴力を憎む。そして、<やさしさ>に味方し荷担する。そんな私にとって、レナーテはいったい何だろう。私は、レナーテという人間を、結果的には侮辱しているのとおんなじなのだ。

 自分以外の人間の過去が、自分の未来に大きな影響を与えることを不思議だと考えるとき、悪しき過去の象徴ともいうべき巨大な戦争の微細な一部を覗いてみなければならないのではないでしょうか。
          ---あとがきより

 人間の、憎悪や愛情のエネルギーが、一国の運命を動かしていくという事実を、『オレンジの壺』において、いささかでも読者に伝えることができればいいのですが・・・。
          ---あとがきより

内容(「BOOK」データベースより)
パリからアスワンへ。謎を追う佐和子は、亡き祖父の日記帳に隠された真実を知る。大戦へ突き進む時代に生きた、祖父の思いは―。自分とはまったく無縁だった過去の戦争に、佐和子は心を踏み入れていく。祖父とかかわった人々の軌跡を追う旅で、彼女は女性としての豊かさを身につけていくのだった。幸福と人生を問い、深い感動を呼び起こす宮本文学の傑作。



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コメント


>オレンジの壺 宮本輝著

はじめまして。
ブログにコメント頂いたので、
ご挨拶に伺いました。

句点が多いのは・・・宮本さんの影響ですか・・・
ほぉぉ!!
確かに・・・好きな作家さんの文章って、
気付かぬ内に、同じ文体で書いていたりして、
何かと影響をうけるものですよね。

オレンジの壺は、特に宮本さんの作品の中でも
謎が多くて、時間が経ってから、
再度読みたい衝動にかられましたよ。

それでは、また、私もまたお邪魔するかも
しれませんので、その際はどうぞ、お見知りおきをば!!

                    菫




似ますよね(^_^;)

薫さんいらっしゃいませ。
そうそういつの間にか影響受けるんですよね。

ぜひまた来てください。僕も行かせていただきます。

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